わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

岡田睦「灯」

「群像」三月号掲載。「おかだぼく」という方で、もう八十歳近いご高齢のようだ。1960年に「夏休みの配当」で芥川賞、1998年に「一月十日」で川端賞にノミネートされている(受賞は芥川賞のときは北杜夫夜と霧の隅で」、川端賞は村田喜代子「望潮」)。
 おそらく老人ホーム、あるいは低所得者向けのなんらかの施設に入所している作家の「ぼく」の部屋から見える工場のあかりをひたすら観察する。その描写が作品の軸になっているのだが、学生時代からの友人の訪問のエピソードがそこに絡みつくように展開される。
 描写をつづけるうちに脱線し暴走し、と後藤明生の『挟み撃ち』や小島信夫の晩期の作品のような、ジャズのアドリブ的な魅力、いやそれ以上かな、ジャズのコード進行なんてベースになるものはまったく存在しない、予測不能な展開だけが持ちうるおもしろさがある。この作家を今まで知らなかったことが残念でならないくらい。

群像 2010年 03月号 [雑誌]

群像 2010年 03月号 [雑誌]

明日なき身

明日なき身

薔薇の椅子 (1970年)

薔薇の椅子 (1970年)

乳房

乳房

賑やかな部屋 (1979年)

賑やかな部屋 (1979年)

ワニの泪 (1976年)

ワニの泪 (1976年)