自分のあり方に迷ったり自信がなくなったり、というときに、自然に手が伸びる作家。それがぼくにとっての中上健次。とくに『岬』『枯木灘』は繰り返し読んでいる。作品にぼくを元気づけるようなメッセージがあるわけではないし、そんなものなどハナッから求めてもいない。ただ、作品世界に溢れるエネルギーが、猛烈に欲しくなる。それさえあれば、なんとかなるような木がしてくるのだ。
本作、1984年ごろに書店の企画で行われたらしい中上の小説講座を一冊にまとめた作品らしい。半分くらいまで一気に読んだ。しゃべり言葉をそのままテープ起こししただけの内容なので読みづらいのだが、それでも十分に中上の小説に対する想いや視線、思想が伝わってくる。本作を読んでから秋幸の三部作(特に『地の果て 至上の時』)や路地を舞台にした作品を読み直すと、中上が作品内に仕掛けたことがどんどんわかっておもしろい…のかもしれない。
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