講演会のテープ起こし原稿をそのまま書籍化しているので非常に読みにくいし意図も掴みにくいのだが、それでも中上の物語論が漠然とながらわかった。ギリシャ悲劇の時代にすでに確立してしまった、あるいは人間の本能として存在している「物語」の恒久普遍的なひな型を構造的に越えることはできない。ならば作家はどうすべきなのか。反物語ですら物語であるという呪縛から逃れることはできない。ならば物語を物語として描くこと以外に作家に取れる道はない。物語を異化し物語を越境しつづけること。これこそが現代を生きる作家の使命……と読めるけれど、ここに小説という形式がもつ近代性というか前時代性という問題が絡む。まともに考えれば、小説は現代という時代にマッチしないのだ。うーん、複雑。
ただ、中上がこの講演を行った84年と現代では文学をめぐる状況も文学自体も大きく変質している。そこを忘れちゃいかん。
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