死。この言葉ぬきにして本作は語れない。子ども向きの漫画だというのに。死んでもすぐによみがえってしまう設定の現代の漫画に、本作をつうじて一席を投じたいと本気で思った。
1話目の「死神」は「鬼太郎」をしのぐ大傑作だと思ったが、最終話の「猫の町」も劣らぬ傑作。死に直面しながらもなんとか生きつづける母と、多くの親しい者たちの死を見てきたが自身の死なんてこれっぽっちも意識していなかったというのに猫の町で事故死してしまった三平、そして死からある程度超越した存在として三平を支える河童やタヌキ。立場と生き方の違う三者が関わりあうことによって、生きることの意味のはじっこのほうの妙な部分が、妙な感じにほじくり返されている。和むような、化かされたような、奇妙な感動を伴う読後感…。
水木サンの作品って物語として展開が何でもアリに近かったり一度起きた事件がほったらかしになったりとメチャクチャな部分があるのだけど、これって、ラテンアメリカ文学の傾向にちょっと似てるかも。
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1988/06
- メディア: 文庫
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