「新潮」1月号掲載。今のところ、論文自動生成プログラムを開発したちょっとクレイジーな男とその姪の超理系的交流(文系的要素もあり)、という感じ。書き出しが凄まじいので引用。作品世界の、いや、この世界の、わけのわからなさの象徴。
叔父は文字だ。文字通り。
だからわたしは、叔父を記すための道具を探さなければならない。普通の道具を用いる限り、文字は叔父とはならないから。彼は文字のくせに人間なのだ。ペンを用いて叔父を書き、それが文字となるならば、いや勿論これは逆なのであり、ペンを用いて文字を書き、それが叔父となるならば、他の文字まで母やら祖母やらいう者なのだとなりかねない。それは困る。面倒だ。面倒なので困ってしまう。家族が文字なら、わたしも文字かも知れなくて、それならそれでいいのだけれど、じゃあこの手記は誰が書いているのかということになる。もっともそんな文字のプランを、叔父は手紙で検討している。とうの昔に。(後略)
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