「群像」10月号掲載。CMから小説の世界に土俵を移した川崎さんの作品は、今のところすべて読んでいる(つもり)。淡々とした私小説だが奥底に死への畏敬や運命への静かな怒り、そして世界と対峙することへの悲しみが感じられ、とても気に入っている。
本作、読みはじめたばかりだが、非常にいい感じだ。最高傑作の予感…。
京都にキャンパスのある、大学らしき教育機関で週1回、映像に関する授業を受け持っている元CMディレクターの男が主人公。彼は授業で、生徒たちに自分の一番最初の記憶を思い出させ、それをレポートにして発表させる。教え子たちの記憶、そして彼自身の記憶。過去をたどることで今の自分の生を、そして未来を感じ取る一方で、それらがすべて死に帰結して行くことを彼は再認識する。気になったところ、ちょっと引用。
我々が何をし、どう生き、振舞おうと、それらはことごとく死という大皿に降る雨のようなものだった。そうではないな。我々が生きている間に為すあらゆる行為の最後に位置するのが死であって、だとすれば、死の意味と価値は他の行為と同等とも言える。ただ、人が為す最後の行為であるがゆえに、過剰な思い入れの器になり勝ちなのであった。
授業を終え外に出ると、冬の闇だった。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/07
- メディア: 雑誌
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
- 作者: 川崎徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/21
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
- 作者: 川崎徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/10/27
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (18件) を見る