表題作。マンションの外壁改修工事の様子から、工事の手も止まった夜中に突然鳴きだした蜩の声をきっかけに、戦中の疎開時にひろった蜩の死骸の放つ臭いニオイの記憶などが芋づる式に引き出されて行く。
喧噪の中で、人は生きる。沈黙は避ける。自ら音を立て、耳を澄ますでもなく、聞き流すでもなく、ただそこに音を存在させることで、安堵する。それでいて、邪魔な騒音には耳を塞ぐ……。これが現代の生き方なのかもしれない。
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/28
- メディア: 単行本
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