「風」「草」「光」。この作品は長編ではなくおなじ世界観、おなじ設定のもとで描かれた連作短篇と捉えるべきだと考えていたが、半分を読み終えて、やはりこれは長編なのだとよくわかった。行ったり戻ったり、時には反復や省略もされる決して直線的にならない展開は、実験的ではあるのだが、重層的に人の記憶を描いていくにはもってこいの描写手法なのかもしれない。その、重層的に描かれる世界が、読みすすめるほどに、少しずつ、少しずつ、物語として像を結んでゆく。

- 作者: 金井美恵子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01
- メディア: 単行本
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