「新潮」10月号掲載。この作家のこと、まったく知らない。だが、書き出しを読んで魅了されてしまった。よくわからないままに、読んでみる。書き出しの一部を引用。
人はだれでも、自分の手でしか触れることはできない。自分の目でしか見えない。自分の耳でしか聞けない。それなのに、なぜ歴史はあるのか。
(中略)
私のこれまで書き、今書き、これから各言葉のすべては、遠からず滅びるものである。滅びると知りながら書かれるもの、すなわち稗史である。(中略)
人の手が触れられるものは小さい。人の目が見られるところは狭い。人の耳に聞こえる音は近い。自分の手足が人と大差ない小ささしかなく、自分の耳目は他人のそれと変わりなく卑近をしか捉えない。稗史の末裔である小説はここから始まる。
まだまだ長く引用したいのだが、ひとまずこのへんで。歴史の曖昧さ、言葉のはかなさ、そして人間の矮小さから、いったい何が語られるのか。
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/07
- メディア: 雑誌
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (9件) を見る