わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

大江健三郎「晩年様式集」(11)

「群像」12月号掲載。四国のギー兄さんの根拠地だった場所からやって来たギー・ジュニアと長江古義人との対話、というか、古義人の作品『懐かしい年への手紙』をテーマにしたインタビュー。
 ギー兄さんは創作上の人物だが、本作では実在した人物として扱われている。したがってギー・ジュニアも実在の人物ということになる。そして『懐かしい年への手紙』は、実話をもとにして書かれたドキュメンタリー要素の強い小説、ということになる。あくまで作中は、ということだけど。大江さんは自分の作品の精算をしたいのだろうけれど、現実世界を無視して作品世界をあたかも現実であるかのように扱い、現実世界で発表された自身の作品を虚構の一要素としてこの作品の中にブチ込む。実にトリッキーな構造。現実と虚構の境界線を曖昧に、あるいは複雑にすることで、大江さんは一体何をしようとしているのか。よくわからない。だが、おもしろい。

群像 2012年 12月号 [雑誌]

群像 2012年 12月号 [雑誌]

大江健三郎の作品はこちら。最新の単行本は『定義集』ってことになるのかな。