1937年に出版された「大日本魚類画集」で原画を担当した、博物画の巨匠とでもいう感じの画家。正直言って初期の日本画はまったくよくないのだが、生物に対する愛情はしっかりと感じられていて、その気持ちが「大日本魚類画集」では超絶技巧と絶妙な構図となって爆発した、という感じかな。構図の作り方や背景の描き方は、限りなく浮世絵に近い。緻密かつ静止的に描かれているにも関わらず、生き生きとした躍動感、まさに泳いでいるような感覚に満ちた傑作は、題材が魚ということもあってか、とても涼やかな気分になれる。まさにこのクソ暑い夏にうってつけの企画展。東京駅の煉瓦建築の中を探索するというもうひとつの楽しみもある美術館なので、一度は行っておいたほうがいいと思う。