宇宙とは一体何なのか。そして、そこで生きるわたしたちとは一体どんな存在なのか。わたしたちは、宇宙というわけのわからない存在と、どう向き合い、どう生きるべきなのか。そんなテーマなのだろうか。宇宙に広がる絶対的な孤独、虚無、すべてを無に帰そうとするある種の存在、そんなものと、生きつづけ、存在しつづけ、命を引き継ぎつづけようとする存在との、地味だけれどひょっとしたら普遍的で、運命なのかもしれない、戦い。その記録(のごく一部)…とも読めなくもない。この対立項は、すでに近年の傑作だった『「悪」と戦う』で提示された善と悪という概念すらを超越している。
源一郎さんの初期の傑作『さようなら、ギャングたち』や『ジョン・レノン対火星人』などで展開された、断片的な小品を積み重ねることで大きな小説世界(物語世界とは言い難い)を構築するという技法は本作でも使われているのだけれど、正統な文学的描写が随所で見られるので、雰囲気はがらりと変わっている。
いずれにせよ、問題作であることに変わりはない。個人的には、今回のテーマはもっともっと突き詰めてほしいと思った。
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