わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉「子供たちの道」読了

 母も家もない幼い子供たち、彼らを無理やり我が子にしようとする出戻りの女、子供たちをじっと見守る十歳の少女・信子、そして子供たちを街に送って保護させようとする大人たち。子供たちは狂気と悲しみに襲われて無となり、大人たちは憎悪と憐憫の間で揺れながら、子供たちとの距離を探る。この微妙な内容を、会話や心理描写に頼ることなく、丹念に、そしてコンパクトに描ききっている。
 これ、戦後短篇小説の傑作だと思う。なんで話題にのぼらないんだろ…。

雪の下の蟹・男たちの円居 (講談社文芸文庫)

雪の下の蟹・男たちの円居 (講談社文芸文庫)

古井由吉の作品はこちら。