わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

三浦雅士『私という現象』

 こんなに下半身が大変な時に、なぜこんな小難しい本を手に取ってしまったのか。われながら理解に苦しむ。
 宮沢賢治の推敲方法について言及されている箇所が興味ぶかかった。賢治の作品には決定稿に至までいたくさんのバリエーションが生まれていることは子どものころからよく知っていて興味も持っていた。この人どうしてすぐこんな状況になっちゃうんだろ、と疑問に思っていたのだが。入沢康夫天沢退二郎が発見した「生成する作品」という概念は、非常にしっくり来た。そうだよな。孫引きになっちゃうけど引用。

 彼(宮沢賢治)の推敲は、そのような、最終的・決定的な完成を目指して、長い時間をかけて、作品のあちらを直したり、こちらをととのえたりする、といたものではなく、その都度その都度の完成と、その度毎になされるそこからの脱却を本質としていて、しかもこのことについて、作者自身きわめてはっきりとした方法的自覚を持っていたらしいのです。こうした芸術のあり方を、賢治は「四次元芸術」という風に呼んでいました。この考え方は詩集『春と修羅』の序詩や「農民芸術概論」の中に明確に記されています上、いくつかのメモの中でもこれにもとづく意向が示されています。すべては第四の次元である時間の軸に添って移動し変化して行く。作品についても、その変化の一つ一つの層がすべてその作品の真実であり、そうした変化の層において捉えられた全体が、その作品のありのままの姿なのだという考え方です。このような文学観・作品観にもとづく創作行為にあっては、唯一で最終的な《決定稿》ということには元来あり得ないのです。(入沢康夫銀河鉄道の夜』の本文の変遷についての対話)

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私という現象 (講談社学術文庫)

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新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

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銀河鉄道の夜 [DVD]

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新編宮沢賢治詩集 (新潮文庫)

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宮沢賢治詩集 (岩波文庫)

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新編 宮沢賢治詩集 (角川文庫)

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