わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

金井美恵子『お勝手太平記』

 失礼なことを失礼と思わず手紙に書いて友人マリコさんを怒らせてしまったものの、罪の意識など微塵も感じず、それでいてグジグジと気にしつづけているアキコさん、ホントにウザい。うざすぎておもしろい。基本的には独白、そして語りかける相手は受け取り手だけに限定されることになる「手紙」という形式でこれだけ豊かに人間模様を描き出せるのは、さすが金井さん、という感じ。そして、アキコさん同様にウザい建築家が一方的にクライアントに送り付けているという、『快適生活研究』に登場した「よゆう通信」が本作にも登場。このタイトルを見て爆笑してしまった。
 アキコさんが、手紙の受け取り手であるみどりさんの学生時代の服装への無頓着さを指摘している部分があまりにもおもしろかったので引用。いきいきとしたイジワルさが際立つ。

私はね、制服のボタンがとれても、スカートの裾がほつれても、女中さんが直してくれたんだけど、あなたってバンカラさんのところがあったから、制服のブラウスのスナップ(ボタンどめじゃなくて、なぜかスナップでしたよね)が一番上だけを残して、あとはデコとボコのどっちかだけしか付いていないので閉められない状態なのに、ジレーを上に着てるからわからないって、そのままにしていたし、スカートの裾のほつれも、ウエストのボタンの取れたのも、全部、安全ピンでとめてたじゃない? パンティのゴムが伸びたって取りかえずに安全ピンでとめるって、さ。

 …アンタ、また友だち怒らせようとしてるだろ。

 





お勝手太平記

お勝手太平記

 

 

 

快適生活研究 (朝日文庫)

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快適生活研究

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