若年層を対象にした商品のプロモーションを企画したり制作物を手がけたりする機会は決して少なくないのだが、必ず迷うのがメディアプランニング。オンライン中心の構成を考えてみても、どこかスッキリしないことになる。だが、今回の記事を読んでかなり納得できた。おそらくスッキリしない理由は、媒体選びに気を使っていたから。そうではなく、彼らの価値観や消費の動機をもっとしっかり把握し、そこを出発点に施策を考えるべきだったから。若者だからこの媒体、この媒体だからこのツールとこの表現、というロジックは、通用しないのだと思う。
以下、記事の概要と、ぼくが個人的に思ったことをざっくりと紹介する。
消費をしない!?若者を分析する
キリン食生活文化研究所によるレポートを紹介する記事。一人で行動したいという衝動の背後にも、「友人への気遣い」という動機が見え隠れする。ネットではつながりたい、大きなイベントなどは一緒に盛り上がりたいと考えているのに、一方で、自分一人で誰からも干渉されることなく楽しむことを大切にする。このレポートを読んで真っ先に思い浮かんだのが、小説家・平野啓一郎が主張している「分人」という考え方。人は、接する相手によって自分を変えていく。その「変わる自分」の集合体こそが自分の本当の姿である、という考え方。これが理解できないとアイデンティティに悩むことになる。若者の「つながりたいけど一人でいたい」という傾向は、まさにこの「分人」のバランスをうまく取るための最善の方法、と受け取れなくもない。
「若者のもの離れ」対策異業種会議 Part 1 |ビール業界(キリンビール)×TV業界(TBSテレビ)×若者研究所・原田曜平氏の三者による鼎談
ビールとテレビは、確かに若者離れに悩む業界の代表格。
例えばビール離れなど「○○離れ」が起きているのは事実だが、その原因は、
①社会的な消費の強制がなくなったこと(「まあ飲め」「タバコで一服しながらコミュニケーション)」
②消費の動機が個人的価値からSNS的価値に移行したこと
③納得(自分の価値観などに合致)しなければ消費しないこと
の3つに集約されそう。以下、鼎談の中で重要と思われたことを箇条書きしてみた。各業界代表者が具体的にどんなアプローチをしているかを説明しているなど、非常に興味深い記事になっているので、ぜひお読みいただきたい。
●社会的に強制されることがなくなったため、「ビール離れ」「タバコ離れ」などが生じた
●ある消費者が20代で選択したブランドは、30代以降の消費にも影響を与えつづける可能性が高い
●若者の消費対象から外れている商品でも、イベント化されれば「参加」という形で消費してもらえる可能性が高くなる。その好例が、ビール離れの若者がなぜか多く参加し盛況の「オクトーバーフェスト」。盛況の理由は、おそらく「SNSのネタになるから」「みんなで盛り上がれるから」
●今の若者の消費傾向は「お金持ちの2代目」。生まれてからずっとある程度満たされていて、物欲が低い
●若者は、自分一人が満たされることより、友だち全体が盛り上がることのために消費する傾向がある
●若者は、納得してからでないとモノを購入しない傾向がある
さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち (角川oneテーマ21)
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近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)
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情報病――なぜ若者は欲望を喪失したのか? (角川oneテーマ21)
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僕たちの趣味、メディア、遊び —若者研 学生プレゼンテーションから—
博報堂Consulactionセミナーで行われた、博報堂ブランドデザイン若者研究所の現役学生研究員によるプレゼンテーションを紹介している。おもしろい内容なので、ぜひご一読を。
①「なぜ若者が遊びに〈一体感〉を求めるのか」
結論は「人間関係数の増加により、『短時間で深く』が求められるようになったため」と「会話が途切れないため(体験を共有していれば会話できる)」の2つ。いやはや、この理由は衝撃的だ…。
②「若者の趣味の〈情報源〉は何か」
こちらの結論は、口コミがメインという想定内の結果なのだが、そこにつづく「趣味」に関する彼らのスタンスが意外。「趣味の話は友人とはしない」「趣味は個人でやるもの」というのだ。その趣味が友だちと共通でない場合、自分が主体になって話すことになってしまう、それではコミュニケーションは成立しない、ということらしい。加えて、みんながすぐには理解できないこと、みんなが知らないことを話題にするのはKY、ということにもなるらしい。ま、そういう人いるけど、よく聞いているとものすごくおもしろいんだけどねえ…。
「若者のもの離れ」対策異業種会議 Part 2|クルマ業界(トヨタ/ダイハツ)×ガム業界(ロッテ)×不動産(三井不動産レジデンシャル)の三者による鼎談
「今の若者はどうなのか」をひたすら掘り下げた前述記事から一転、こちらの記事はとにかく企業が模索に模索を重ねていることがよくわかる、企業寄りの内容になっている。事例として、きわめて有効だと思う。
ゲレンデ発のビッグウェーブ 若者を呼び戻した「マジ☆部」プロジェクト
19歳限定でリフト券を無料提供するキャンペーンにちょってスキー場に若者を呼び戻すことができた、という成功事例。戻ってきたバブルの頃に比べたらまだまだ少ないのだろうけれど。確かに、ここまでの記事で展開されてきた「つながりたい」「イベントで思い出の共有を」といった欲求を満たすには、ゲレンデは最適の場所かもしれない。