「窓の内」。一線を超えること、異界を垣間見ること…。よくわからない何かが繰り返し登場するが、断片として積み重ねられていくだけで、物語としての大きな動きはない。ただ、人の心がけが、静かに、ゆっくりと、意識をうしなって重く沈むように、あるいはふわふわと所在なく舞うように、動く。『蜩の声』あたりで見せた、あの世に片足突っ込んだような緊張感に満ちた語りとは異なる感じだが、どこかでおなじにおいがする。『蜩の声』は近視っぽかったが、本作は遠視っぽいというか、まなざしが遠いというか。
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