わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

長野まゆみ『45°』読了

「x(閉じる)」。xは、記憶喪失者の記憶のクローズボックスとしての記号。これは連載で読んだ。
 最後の作品「P.」。二世帯住宅での生活から逃げた実は偽名を使っていた義兄、必死で義兄の残した借金を返済しようとする元男性の姉、そして義兄の逃亡により空いてしまった二階に新たに住むことになった、常にウサギの着ぐるみを着ているちょっとおかしいゲームクリエイターの男。彼らを観察しつづけている「ぼく」は、実は…。これも連載のときに読んだ。
 すべての作品に共通しているのは、おかしな方向に突き進んでいく人生のさまざまな形と、それを引き起こした人間の暗黒面が描く直線的な流れ。要するに因果関係。明確に因果が見えていない作品も多いのだが、それでもついつい因果を探したくなり、そしてそこに寓意を読み取ろうとしてしまう。だが、完全に読みとるべきではない。ふわっと、読む。それが本作の一番正しい読み方であり、楽しみ方なのではないだろうか。

 

45°

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