〈ひと〉とは何なのか、どんな存在なのか、という命題に関する考察。と書いてしまうと身も蓋もないが…前書きで著者は、こう述べている。
〈顔〉という他社との遭遇の最初の場面から、名前をもった「この人」、愛憎という他者との確執、家族という場を経て。「わたしのもの」という所有の意識、「個」としての自由、市民清、多様性、人間性、そして最後に死へと主題をつないでいる。
というわけで、一章目「顔 存在の先触れ」からちょこちょこと読んでいる。認知の上でもコミュニケーションの上でも、そして個人のアイデンティティを語る上でも重要なファクターである〈顔〉は、個人の印象や特徴を決定づけながらも、一方で決して凝視できないもの(正確には「しにくいもの」だよな)と捉え、このねじれた特性から、〈顔〉のもつ本質に迫り、さらにはその向こう側にある「〈ひと〉とは何なのか」という命題につなげていこうとしている。たくさんの言葉を費やしているわりに思考は停滞気味のように思えるのは、ぼくの理解が停滞気味だからかもしれない。
ジャコメッティの描いた肖像画の方法論およびジャコメッティの考える〈顔〉の機能についての考察は圧巻。