「群像」2015年5月号掲載。拉致されたフォギーは、20世紀のジャズの巨匠のandroidたちとセッションしたのは自分の肉体ではなく、初代フォギー池永霧子の姿をしたアンドロイド(をそうとは知らぬまま脳波?で遠隔操作していた自分)であったことを知る。
一方、モリキテック社と〈Met02〉はコンピューターウィルスのパンデミックを防ぐべく、その秘密を(本人は知らないのだが)握っている可能性があるフォギーの脳をコンピューターにコピーした後、肉体を分解して検査しようとする。情けない副社長の姿に爆笑。
文語調(なのに時々破綻する)の文体で近未来を語るというスタイルは意外に新鮮。この手法があるからこそ、本作はただのエンタメではなく、確たる文学性を確保できているのだと思う。デジタルやロボットといった科学技術が行き着いた先で、人間の尊厳はどうなるのかという問題提起もしているのだろう。そういうことはあまり関係なく読みたいけど(じわじわっと感じる程度がちょうどいい。それくらいが、こっちが考える契機になりやすいから)。