わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

大澤真幸×酒井啓子「イスラームの不思議」

「群像」六月号掲載。『〈世界史〉の哲学 イスラーム篇』出版記念対談。ひとまず前半だけ読んだ。要するにこの作品の総集編的内容なのだが、酒井啓子というアラブ政治学者(でいいのかな)が対談相手になることで、ともすると仮説のオンパレードになってしまうこともあったこの作品が、急に。現実にしっかり完璧に根ざした内容になっているように思えてくる。おもしろいなあ。
 なぜイスラームで資本主義は発達しなかったのかという問い、そしてなぜイスラームには欧米的ナショナリズムが定着しないのか、という問題に対する二人のやり取りはまさにエキサイティング。欧米の植民地政策とナショナリズムの関係について、大澤は「二重のコミットメント」という概念で説明しようとし、これがイスラームには欠けていると指摘するが、酒井はイスラームも「オスマン帝国」という存在によって二重のコメットメントを経てはいるのだが、ここにアラブ/非アラブという問題やが関わるために、西欧型の二重化にはならず、スンニ派/シーア派という問題も関わると、国という単位への帰属意識は希薄はどんどん希薄になっていく…みたいなことを言っているように読めるんだけど、これでいいのかな。結構、話が飛んでるんだよね、この対談。