「群像」2015年7月号掲載の対談。古井さんの新刊発刊記念ということらしい。年をとることによる書くことの変化、時間の並列化、そして自我の拡散。ひたすら凝縮され沈降しつづけつつ、もがくように、それでいてあがくことなく、静かに匍匐前進する…そんな印象のあったかつての古井作品からの、ここ数年の作風の変化。五年くらい前までは棺桶に片足突っ込み、無理やりあの世を覗き込むようにして、生死の境を、記憶と未来の接点を、緻密に、ゆがめたり圧縮したりしながら書いているさまにひたすら圧倒されつづけていたわけだが、ここ数年は肩の力を抜き、過去のスタイルからも小説という様式への固執からも解放された自由な感覚で書いているなあ、という印象だったが、この対談を読んで、なるほど、そういうわけか、と納得。