「群像」2015年11月号掲載。カントの『判断力批判』をつうじて「美」の本質を解き明かす試み、って言っていいのかな。「美は目的の表象を欠いた合目的性である」という主張。美を感じる主体にとって美しいと思う対象は当然ながら客体なわけだけれど、その客体を美しいと感じるということはそれを評価し伝えるという目的を生じさせているのだが、その目的は強く意識されることはなく普遍的な美に対する感動として表現され、その感動は主体に固有なものであって決して他者と共有できる価値ではないはずなのだが、それでも口をついて出る感動の表現というものは、要するにそれを伝えるという目的を表面的には欠いていることになる、ということ…なのかなあ。最後の部分が美とは何かについてを非常にコンパクトにまとめているのでちょっと引用。ちなみに(243)というのはカントの著作の引用部分。
美しいものは無償である。とりわけ自然は、多様な美しさのうちで「ぜいたくなまでに自分を濫費している」(243)。自然のこの意図なき贈与にこそ、美が生まれる根源的な根拠がある。美が目的を欠いた合目的性であるのは、自然が惜しみなく美を与えるからなのである。
じゃあ、どうして人間は美を感じるのか、という問いが自然と生じてしまうわけなのだが、今後考察されていくことになるのだろうなあ。
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