「夜には九夜」。ある、愛し合うことを忘れ憎しみすら抱くようになった夫婦、今風に言えば仮面夫婦ということになるのか、そんな夫婦が、自分たちの経営するさびれたホテルで、客であり自分たちの今の、あるいはかつての浮気相手の目の前で、青酸カリを使って自らの命を断つ。内容には夢も希望もなく、あるのはただ、相手や社会、そして自分への、憎しみだけ。救いようのない内容だが、救いたくなんてまったくならない設定でもある。そういう作品もガッツリ読ませる作品にきっちり仕上げてしまうのが、金井美恵子の金井美恵子たる所以、と言えなくもない。
恋人たち/降誕祭の夜 金井美恵子自選短篇集 (講談社文芸文庫)
- 作者: 金井美恵子
- 出版社/メーカー: 講談社
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砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集 (講談社文芸文庫)
- 作者: 金井美恵子
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