物語の動き方がダイナミック。路地の秋幸を主人公にした一連の作品は緻密に心理描写と情景描写をつみかさねていくことで衝撃的なラストに向かって作品のテンションを高めているが、物語としては大きな動きは起こらない。『千年の愉楽』は中本一族の高貴で汚れた血のことを繰り返し述べつつ、その上に時代時代の中本の男たちのエピソードが塗り重ねられていくような構造だったけれど、本作は愚直なくらいまっすぐに物語りが進んでいく。こういう書き方も中上の熱量がダイレクトに感じられて、ものすごくおもしろい。
千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection)
- 作者: 中上健次
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 文庫
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