「群像」2016年11月号掲載。副題は「「一人称」の発見まで」。
近代に到るまで、日本の文学には人称が明確に存在しておらず、この概念が確立したのは言文一致体の二葉亭、美妙の仕事による。そして谷崎の人称に対する意識と理解の高さについて。
日本語は非人称でも口語体も文語体も成立してしまう。加えて能のような語りはあの世とこの世の境目がないがゆえに、物語を語っているのが作者なのかこの世ならざるものなのか作者がつくりだした登場人物なのかが明確になりにくいので、あいまいになってしまう傾向があった、ということ…かな。