前者は、世田谷美術館の所蔵品を美術と生活をめぐる視点から、5つの物語(+プロローグ、挿話、エピローグ)として構成して展示した企画展。バラバラに思える作品群が、音楽で言えば一つの組曲のように重層化していくから不思議だ。
- プロローグ:マックス・エルンストの立体作品がドーンと。
- 第1話「私をめぐる物語」:アンリ・ルソー、アンドレ,ボーシャンなどの素朴なテイストの画家たち。自分だけの価値観、見え方、タッチが世界に及ぼす力。
- 第2話「未知の文化と出合う物語」:土方久功のマスク作品、アフリカの床屋の看板。看板の素朴なのにクールなタッチはすばらしい。なぜか音楽的なものを感じた。
- 第3話「美術と言葉で物語る」:水木伸一と河東碧梧桐の、水彩画と自由律俳句(なのかな)のコラボ作品など。自然と一体化、というより視覚と言語が一体化する感覚が、絵本や挿絵つきの文学作品などを見るよりも強烈。
- 挿話「暮らしの姿」:桑原甲子雄が撮影した戦前の世田谷ボロ市。庶民のリアルな生活の姿。
- 第4話「大きな物語のなかの私」:ミクロな視点を持った(ぼくの大好きな)熊谷守一、そして一面の星空や雲海など壮大な作品を描いた小堀四郎の作品を対比させる試み。グーグルアースでギューンとフォーカスしていく感じ?
- 第5話「日常から始まる物語」:A.R.ペンクやバスキア、そして横尾忠則。さらにはアラーキーのデビュー作品。荒木さんの作品は鬱陶しいくらいの生命力に満ちた力作。
- エピローグ:ビル・トレイラー。よくわからないのだがグイグイと惹かれる「わが家」。天井の男は何者なのだろう。どこを見ているのだろう。なぜ家の中の人たちとおなじところを見ているのだろう。
後者は世田谷美術館が開館した1986年に発表されたさまざまな作品(全部所蔵品)を公開。おもしろかったのは路上観察学会のいわゆるトマソン物件、それから横尾忠則が三日間この美術館の地下で創作作業を公開しながら描き上げた力作たち。すっばらしいです。