「群像」2018年11月号掲載の連載小説。ついに最終回。
今号で、ついに猫のようないたちのようなラッコのような姿をしているらしい四つ足の謎の生きものであり、木の股から生まれた多くの人間たち(「わたしたち」)の意識の集合体のような存在であり、長くパンデミックが起きたらしい近未来?を彷徨っていた人外は、その旅を終える。
少しずつ言葉を失っていく姿。そして最後の言葉が消えていったあとに、入れ替わるように作品世界に鳴り響く音楽。この謎の動物には一切感情移入はしなかったのだけれど、それでも、言葉を手離した知性を持つ命の最後の瞬間を、こんなにも美しく、はかなく、悲しく、それでいて、わずかではあるけれど希望も感じさせるかたちで描けるなんて。
本作は通読すべきだと思う。単行本、早く出て欲しいなあ。
全作品を読んでいるわけではないけれど、これが一番気に入っている。