わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

鷲田清一「所有について」(2)所有と固有

「群像」2020年4月号掲載。

「所有」とは帰属のことであり「もつ」とは合致しないという問題から、ヨーロッパ系のさまざまな言語の語源や、名詞・形容詞・副詞などへの変化、意味の派生などから、「所有」とは何かを掘り下げている。property《所有〔権〕》という語が、譲渡可能性と言うことを本質的に含む〈所有〉という意味と、譲渡不可能なものを指し示すはずである〈固有〉という意味の両方を持ち合わせている、という分析は面白い。ここから、〈占有〉や〈独占〉、〈排除〉といった行動への発展につながる…のだろうか。リクールという哲学者(知らなかったけど、解釈学、分析哲学、時間論などを展開しているらしい)の「同化」に対する考え方も興味深かった。リクールは、「同化」とは「占有」ではなく、むしろ貪欲で自己愛的な自我の放棄の契機である、と主張している。そして鷲田さんの解釈では、「同化」は「所有権剥奪」のプロセスだという。なるほど。例えば、よくカレーが大好きな人が美味しいカレーを食べると「もう、このカレーを自分にかけてほしい!」なんて冗談を言うことがあるけれど、これは「美味しいカレーを食べる=占有する」という行為ではなく、「カレーと同化する=自我の放棄」ということだね。

 

 

群像 2020年 04 月号 [雑誌]

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