乗代雄介「旅する練習」読了 - わたしが猫に蹴っとばされる理由

「群像」2020年12月号掲載。

　サッカー、コロナ禍、仏教、ジーコ、柳田国男、野鳥、文章によるスケッチ、年齢差のある友情、就職難…といったさまざまな要素が、軽快にくっついたり重なりあったり離れたりを繰り返しながら、単調な「徒歩での旅に動きを与えている。ラストで急にセンチメンタルになったかと思ったらオドロキの結末になってしまうのだが、この展開は書き始めた段階から構想していたのだろうか。作品を締める最後の一文は、おそらく漱石「坊っちゃん」のオマージュだと思う。