2007-07-09 古井由吉『槿』 読書日記 杉尾と寝てしまった変質者を呼び寄せる女・井手は、そのことを忘れてほしい、自分も処女になったようなつもりでいる、と杉尾に訴える。高校時代に杉尾に手をつけられたと、ありもしない事実を自殺した兄に信じ込まれ、自身もいくぶんそんなつもりになっていた萱島と対照的。そこに、杉尾とはさほど仲よくなかった、癌の疑いで検査入院中の旧友の存在が紛れ込み、物語は複雑化していく。