今さらな感じだが、今月の「群像」に本作を取り扱った評論の力作があった。読んでみたら作品も読みたくなってしまった次第。カミサンは昔から小川洋子のファンらしい。この作家、ぼくはフェティッシュで人間の暗黒面を淡々と書くのが巧いと思っているんだけど、どうなんだろう。
ひとまず冒頭二十ページくらい。博士の愛した数式とはどんなものなのだろう、それを気にしながら読みはじめたのだが、いきなりわかってしまって拍子抜け。ニンゲンとニンゲンをつなぐ数字の神秘、コミュニケーション手段になりうる数式こそ、博士が愛したものなのだろう。家政婦やその息子ルートとの記憶は八十分で消えてしまうが、彼らと博士のあいだを結ぶ数字の神秘は決して消えないのだ。
このあとの展開が楽しみである。って、あらすじは例の評論ですでにだいたいわかっているのだが。
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08/28
- メディア: 単行本
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