「杉を訪ねて」読了。寺院で偶然十年ぶりに再開した女と飯を食い、別れる。ただそれだけの話なのだが、最後の三行が、のどかな中にわずかに淫靡な匂いをたてていた作品世界を180度変えてしまう。
亭主はあたしに接吻して出て行って、それきりになりました、首をくくったんですよ、とつぶやいて雑踏の中をうろうろと見まわした。
風が吹き寄せて、あたり一面に草がざわめいた。
つづいて「千人のあいだ」。寺に泊り、湯に浸かり精進料理を食う主人公。千人講とかいう団体客らしきものと鉢合わせになるのだが、はて、このあとはどうなる。