わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『山躁賦』

「杉を訪ねて」読了。寺院で偶然十年ぶりに再開した女と飯を食い、別れる。ただそれだけの話なのだが、最後の三行が、のどかな中にわずかに淫靡な匂いをたてていた作品世界を180度変えてしまう。

 亭主はあたしに接吻して出て行って、それきりになりました、首をくくったんですよ、とつぶやいて雑踏の中をうろうろと見まわした。
 風が吹き寄せて、あたり一面に草がざわめいた。

 つづいて「千人のあいだ」。寺に泊り、湯に浸かり精進料理を食う主人公。千人講とかいう団体客らしきものと鉢合わせになるのだが、はて、このあとはどうなる。