わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

山崎ナオコーラ「この世は二人組ではできあがらない」読了

「世界は二人のためにある、というのは幻想」「恋人や配偶者に依存せずに世界と対峙し関係を構築する、という生き方」といったところがテーマなのだろうけれど、主人公(ナオコーラさん自身がモデルか)がどことなく、自己肯定と自己正当化の手段として自分の生き方を規定しようとしているような。自己正当化が悪いと言っているのではない。おそらくそう読めてしまう原因はこのエンディングに至る経緯にあるような。どんなに未来に対する希望を書いてみても、漠然とした悲しみにいったんすっぽりと包まれてしまった作品世界にはそれが染みついてしまっていて中々拭いさることはできない。そもそも文学には何かを書くとたちまち悲しみを帯びてしまうという特性がある(by保坂和志さん)。ここから離れるというのは容易ではないと思う。

新潮 2009年 12月号 [雑誌]

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