わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

鍛練/装似/怪談/食倒

 もう七月か、と思うと気がせく一方、夏を通り越して秋が待ち遠しくなる。学生時代の陸上部の夏合宿や強化トレーニングの思い出のせいか、夏といえば享楽よりも、試練や鍛練といった言葉が先に出る。耐えることが美徳だと信じていた十代の苦い思い出が、流れる汗からふと蘇る。トレーニングの厳しさに、自分の肉体に対し抱いていた自信が土ぼこりに紛れて消える。これを過ぎればさらなる自信と能力がつくはず、そんな願いは練習中はどこかに埋もれたままだ。身体を動かす間は心が無に限りなく近くなっていた。苦痛寄りの無とでも言おうか。もっとも完全な無ではない。わずかに解放の願いと、やめようか、というためらいがある。だが、練習の圧力にそんなものはたちまち押しつぶされる。ところがその圧力がまたやめたい気持ちを呼ぶ。無に近くなった心の中で、エンドレスな葛藤が静かにつづく。そのうち練習の激しさが葛藤を完全に圧倒する。練習が終われば、思いは蘇る。記録は必ず伸びる、と先が見えてくる。だが明日の練習のきつさも見える。次の日も、肉体を酷使して心を無にする。
 
 六時、起床。七時、事務所へ。雨は降っていないが湿度は高い。
 午前中は証券会社パンフと事務処理。午後はカミサンと麻布十番にあるマンションの内見。間取りは気に入ったが、値段とベランダの狭さが気になる。
 十五時、おなじ麻布十番にあるデザイン会社で打ち合わせ。某筆記具メーカーの広告。
 十七時、九段下の代理店でラジコンメーカーウェブサイトの打ち合わせ。市ケ谷駅からのんびり歩いた。女子大があるせいか、若い女の子が多い。見分けがつかぬほどファッションの傾向がみな似ているのは、大学のカラーということだろうか。靖国通りをさらに進むと静かに雨が降りだした。傘を差すか差さぬか迷うほどの降り。街路樹の下を通って凌いだ。
 十九時、帰社。西荻窪の駅前で、都議会選挙の選挙活動が盛り上がっていた。どこぞの候補が友人なのだろうか、稲川淳二をひっぱりだして来た。若い子たちが群がって、一緒に写真を撮ったりしている。稲川氏もまんざらではなさそうだ。応援演説したのだろうか。応援怪談でもかまして欲しい。都政怪談。石原慎太郎の七不思議。そんなもの、あるのかないのか知らないが。
 
 二十二時、店じまい。「力車」で焼肉。スタンプカードがたまったので四千円分のサービスとなった。特選カルビと特上ハラミ、信州牛の牛刺しと贅沢してみた。牛刺しは炭火でかるくあぶってからわさびと醤油で食べると、肉の味が活性化してよりおいしく感じた。サシが適度に溶けて甘味が増すのだろう。冷たいまま食べるより、旨みや香りがしっかり口の中に広がる。
 
 夜は食い倒れた。