作者が古典的な詩作をひもときながら、あれやこれやに思いをめぐらす……というかたちの、限りなくエッセイや評論に近い小説。
「1 ふたつの処刑詩」。西暦九九二年に「私は神だ」と言ったために死刑を宣告されたフセイン・アル・ハラージの処刑をうたった詩。そしてリルケの、イエス・キリストの死後・復活前の「地獄行」をうたった詩。生死のはざま、ギリギリの生からは必ず真実(めいた何か)がチラリホラリと見え隠れする。それは前者・フセインにもどうやら見えたようだ。その処刑詩が引用されていた。
認識とは事物を見ることだ。しかしまた、すべての事物が絶対の中へ沈むさまを見ることだ。
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 書肆山田
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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