わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

山本昌代『デンデラ野』

 表題作を読みはじめる。1986年の作。長男のもとで暮らしていた主人公の「おばあちゃん」八十三歳は、長男が死に、次男が死んだので現在は三男夫婦の住む3DKの団地で世話になっている。息子に無視され嫁に疎まれ孫には軽くあしらわれ、近所を散歩すれば別のおばあちゃんと人違いされるという、悲惨だがこの時代の老人としてはごくありふれていると言えなくもない日常を過ごすおばあちゃんは、ある日嫁に、中野サンプラザで遠野の姨捨山伝説「デンデラ野」の昔語りのイベントがあることを知らされる。
 今のところ気になったことを少々。

  1. 長男すなわち父は、いないも同然。
  2. 嫁すなわち母は比較的まともにおばあちゃんと会話するが、その裏側に嫌悪感を秘めているようだ。
  3. 孫の千代子(二十六歳独身大学中退アルバイト)はおばあちゃんとときおり話をするが、馬鹿にした態度を取っている。
  4. 孫の透(十九歳浪人中)は、今のところおばあちゃんとまったく会話をしていない。
  5. 千代子は格闘技に興味をもっており、透はファッションに関心を強く寄せている。つまり、男女の関心の対象が入れ替わっている。
  6. おばあちゃんが語り手だからかもしれないが、意外にもこの家族はおばあちゃんを中心に存在しているように思える。ただし、普通の太陽を囲む惑星のような感覚ではない。ブラックホール化する寸前の年老いた恒星と、そこから逃げる星々といった感じか。