生まれてはじめての歌舞伎観劇である。
通常、歌舞伎は東京なら歌舞伎座か国立劇場、と限られた劇場でしか観ることができない。しかし、ラマンチャ師匠こと松本幸四郎、沖縄に住む女性からいただいた一通の手紙がきっかけで歌舞伎をより多くのひとにという使命感に駆られ、歌舞伎専門の劇場以外での歌舞伎公演の企画を全国に展開しているらしい。
開口一番(とは言わないか…)は歌舞伎の歴史などを、実際の歌舞など交えながらユーモラスに、しかし本物の迫力をちらちら見せつつ説明する「歌舞伎噺」。二番目は、長唄の舞踊「吉原雀」。踊りの優雅さ、そして変わり衣装(っていうのかな)のあざやかさに理屈抜きで惹かれる。三番目は、幸四郎が武蔵坊弁慶に扮する、歌舞伎十八番のひとつ「勧進帳」。ラストの酒宴のシーンの幸四郎のユーモラスだが熱意と哀愁の両方を感じさせる舞いの迫力に気圧され、うわ、これが歌舞伎か、やっぱりスゲエやと日本の文化のパワーを再確認できた。
伝統芸能としてはいささか閉鎖的すぎる感じがするのだが、それは逆に伝統を継承しやすいシステムが確立されているということでもある。工芸などに比べれば、後継者問題に頭を悩ませることはない。