わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

堀江敏幸『いつか王子駅で』

 古書店のオヤジの店をのぞきに行った主人公の回想。知性的だが軽妙な回想ではあるが、実はかなりの暴走っぷり。それを正当化するかのような一文を、ちょっと引用。これには激しく同意できる。内省も促される。

(前略)退屈な日常をいかに反復すべきかをみずからに問いかけるとき、都電沿いを歩いたり荒川べりで野球を観たり図書館でひがな一日本を読んだり王子にモノレールを招致しようなんぞという埒もない空想にかまけたりしながらも、畢竟、こうした「子供心ににたほのかな狼狽」を日々感じうるか否かに、大袈裟だが人生のすべてがかかっているとも思うのだ。そのためには、目の前を流れていく光景に、刻々と更新される哀惜をもって接しなければならないはずなのだが、そういう当たり前といえば当たり前の努力はしているだろうか。ただでさえ創造力に乏しい頭を補う目を養っているだろうか。