ひとりの四十代独身女性である蕗子さんが、別居していた父が宿泊業者の施設以外の場所への宿泊の斡旋である「めぐらし屋」をやっていたらしいことを知り、それを、よくわからぬままに引き継ぐまでの話。「よくわからぬままに」などと書くとまるで自分の意思がないように思えるが、そうではない。虚弱体質で男性とも縁がなく、孤独とも言える暮らしをしていた蕗子さんの人生は、底辺に暗くて重たいものを抱え込んでいるようだった。しかしその状況が、ほんのわずかではあるが、「めぐらし屋」をすることで変わるかもしれない、という期待の中で作品は終わる。
これから蕗子さんは、どうなるんだろう。読み終わった後で、微笑みを浮かべながら勝手な夢想をしてしまう。そんなチカラをもった魅力的な作品でした。
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
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