わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

町田康『パンク侍、斬られて候』読了

 結局、すべては虚構の上になりたっている。ぜーんぶ嘘っぱちなのだ、歴史も、欲望も、狂気も、そしてパンクの精神も。いや、すべてが虚構の上に成り立っているのだと悟ることこそが、パンクの真髄なのかもしれない……なんてことを考えさせるラスト。もう、何が起きてもどうってことない。関係ない。すべてをぶっ壊しちまうだけだ。
 巻末の解説で高橋源一郎が絶賛していた。氏は文学(文学史?)的な観点から本作を読み解き、本作には疲弊しきった日本文学の「未来」がある、とまで言っている。この論には賛成なのだけれど、そういう読み方だけをしていると、町田が本作で何を書きたかったのか、何をしたかったのかを想像(読むとは想像することだからね)する際の足枷になってしまうような気がした。自由に読んだほうがいい。


パンク侍、斬られて候 (角川文庫)
作者: 町田康
出版社/メーカー: 角川書店
発売日: 2006/10
メディア: 文庫