戦中の瓦礫の陰での見知らぬ男女の交わり。八十年代前半だろうか、壮年と老年、見知らぬ男同士の病院での、入院中限りの交流。そして最後にバブル期の、四十代のバツイチ女性とその隣に住む死期を悟ったかのような老人との、淡いが妙な鋭さのある交流。三つの交流が描かれている。おそらく後半2章の老人は、最初の章で見知らぬ女を抱いた男なのだろう。年を重ねるごとに募る孤独。瓦礫とは戦中に交わった場所ではなく、心に積もってゆくとらえどころのない、そして味わい方も使い方もわからないような、何かがらくたのような記憶、瓦礫としての記憶が、その孤独の正体なのかもしれない。
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