アフリカ文学の巨匠の代表作。読んでいると心地よくなりすぎてしまうのかアフリカの精霊たちの世界に呼び込まれてしまうのかよくわからないが、すぐに眠くなる。作品世界は強くぼくを引き込み魅了し、そのままどこかに連れ去ろうとしているらしい。困ったもんだ。
呪術的かつ非現実的なできごとに主人公は最初から最後まで延々と翻弄されっぱなしなのだが、それはぼくたち現代人の目の前に突然妖怪が現れて非現実的な体験に驚きっぱなし、というのとはまったく違う。逆に、主人公は自分に降りかかるすべての非現実的なアクシデントを現実としてすんなりと受け止めてしまう。そして時には、自ら非現実な呪術などを用いてそれに立ち向かう。読みすすめるほどに、現代の科学至上的な価値観にいかに自分が毒されているのかがわかってしまい、少々つらくもある……。
既存のモノの見方なんぞ捨てなければ、作品の本質は見えてこないのだと思う。世界は知る方法は決してひとつだけではない。そして、世界を動かす方法も世界と対峙する方法も、ひとつしかないわけではない。ぼくらは、あらゆることを受け入れるべきなのだ。そのほうが、はるかに豊かになれる。そう痛感した一冊でした。
- 作者: エイモスチュツオーラ,土屋哲
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1998/05/30
- メディア: 単行本
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アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)
- 作者: イサク・ディネセン,エイモス・チュツオーラ,横山貞子,土屋哲
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/06/11
- メディア: 単行本
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