「愛の完成」。妻クラウディネは宿舎生活を送る娘を迎えにいくためにひとり汽車に乗り、車内で彼女は物思いにふける…。
導入部は映画的な描写がつづいていたが、一転、ここからはひたすらに心理描写。夫との関係から感じる満足感と幸福感、そしてその愛情を壊し裏切ってしまいたいという歪んだ欲求、その欲求ゆえに感じる罪の意識の間で彼女はひたすら揺れつづける。そのゆれっぷりの描写が硬質かつ視点が異様(主語が明確なドイツ語が原文だというのに、主格がいつの間にか消えたりすり替わっていたりする…)で比喩も難解、というか比喩と回想と車窓から目に見えるモノの描写との区別が、よくつかない。読み返せばわかるんだけど。というわけで、なかなか読み進まない。
- 作者: ムージル,Robert Musil,古井由吉
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1987/12/16
- メディア: 文庫
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