いきなり自宅を訪れてきた犯罪者との接触の記憶をひきずりながら語られた、ある小説家の犯罪者との関係の記録。その危うさや不条理さ、悲しさなどをたっぷりと含んだ、それでいて空虚なたくさんの物語を、最終回では見事に清算してしまった。
物語という形式の持つ虚構性の強さ、そして危うさ。それを否定し乗り越えることではじめて見えてくる人間性。そんなことを考えさせられてしまう、不思議な作品だった。多和田さんの作品はいくつか読んでいるが、本作が一番メッセージ性が強いかもしれない。そして、一番好きだ。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/07
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