わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

多和田葉子「雲をつかむ話」(最終回)

 いきなり自宅を訪れてきた犯罪者との接触の記憶をひきずりながら語られた、ある小説家の犯罪者との関係の記録。その危うさや不条理さ、悲しさなどをたっぷりと含んだ、それでいて空虚なたくさんの物語を、最終回では見事に清算してしまった。
 物語という形式の持つ虚構性の強さ、そして危うさ。それを否定し乗り越えることではじめて見えてくる人間性。そんなことを考えさせられてしまう、不思議な作品だった。多和田さんの作品はいくつか読んでいるが、本作が一番メッセージ性が強いかもしれない。そして、一番好きだ。

群像 2012年 01月号 [雑誌]

群像 2012年 01月号 [雑誌]

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