進駐軍へのコンプレックスや当時の社会的な風潮、日本人の地位や貧しさ、そして日本語と英語の対立と共存。そんなエッセンスが凝縮された短篇だが、読むほどに作品世界のとんちんかんさが気になってしまう。主人公が途方に暮れるようなカットアウト的なエンディングが、迷いに対する共感を呼ぶのではなく、逆にどんどん客観視させてくれる(といえば聞こえはいいが、ようするにドン引きさせるのだ)。そして彼らを、つい笑いものにしてしまいそうになるのだ。自虐的卑下の感覚が、建設的な展開をまるで生み出さない。それでも世界は未来に向かって突き進みつづけるのだが、そこから日本という国が、取り残され、孤立されているような感覚にとらわれた。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/07
- メディア: 雑誌
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
- 作者: 小島信夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1967/06/27
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (59件) を見る