わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小島信夫「アメリカン・スクール」

 進駐軍へのコンプレックスや当時の社会的な風潮、日本人の地位や貧しさ、そして日本語と英語の対立と共存。そんなエッセンスが凝縮された短篇だが、読むほどに作品世界のとんちんかんさが気になってしまう。主人公が途方に暮れるようなカットアウト的なエンディングが、迷いに対する共感を呼ぶのではなく、逆にどんどん客観視させてくれる(といえば聞こえはいいが、ようするにドン引きさせるのだ)。そして彼らを、つい笑いものにしてしまいそうになるのだ。自虐的卑下の感覚が、建設的な展開をまるで生み出さない。それでも世界は未来に向かって突き進みつづけるのだが、そこから日本という国が、取り残され、孤立されているような感覚にとらわれた。

群像 2012年 04月号 [雑誌]

群像 2012年 04月号 [雑誌]

アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール (新潮文庫)

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