表題作、読了。下の姉の結婚式前日に姿を消す、足に障害のある上の姉。語り手である弟は、下の姉の未来にではなく、上の姉の現在にばかり思いを馳せる…。そして、作品の一行目で死ぬと語られた上の姉は、ラストになってもまだ死んでいない(と表面上は描かれている)。弟の想像の世界のなかで生きる姉にも、死の片鱗は感じられない。しかし、どこかが狂っている。
今の古井さんと比べたら文体が若く、びっくりするくらいスタンダードな構成なのだが、ラストシーンの異常な戸惑い、その濃度の高い文章には現在の文体と共通するものが読み取れる。
古井由吉自撰作品 1 杳子・妻隠/行隠れ/聖 (古井由吉自撰作品【全8巻】)
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: 単行本
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