ドキュメンタリーとフィクションが一体となった、ちょっと妙チクリンなかたちの作品らしい。「第一話 痕跡・痕跡・痕跡」を読みはじめる。パリ駅から長距離列車に乗り、ストラスブール駅に向かう主人公。途中、第一次大戦の戦場であったマルヌ河で過去の戦いと、そこに巻き込まれたひとりの詩人に彼女は思いを馳せる。異国を旅することも、旅する途中で目にした何かから連想することも、みな彼女にとっては不安へとつながってゆくようだ。しかし、不安があるからこそ旅に彼女は魅力を感じるらしい。いや、旅に不安を感じることこそが、彼女の使命らしいのだ。引用。
夜の早く来る北国であるフランスでは、みるみる暗くなっていって、こんな暗がりの中で一人でタクシーに乗る不安感とともに、ストラスブール駅に着いた。常に常にヨーロッパでは不安なわたしと、自分を笑っているのであるが。きっと、ヨーロッパに来ると、諸民族の生きてきた不安が何処か深いところに濃縮されて潜勢しているのを、私が汲みあげてしまうのだろう。
なんか、文体もヘン。
- 作者: 高橋たか子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/21
- メディア: 単行本
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