NHK教育テレビの「日曜美術館」「新日曜美術館」で取り上げた作品が一同に会するという、番組ならではの企画展。個人をフィーチャーした企画展にはない多面的な展示が、美の世界の広さと奥深さを強烈に感じさせる。様々な作家を取り上げているのにそれが決して浅く感じられないのは、インタビューの仕方や番組の切り口がよかったかのだろう。以下、気に入った作品。
- 小川芋銭「蓬莱仙境図」…ゴツゴツの岩島と岩山なのに、絵全体が笑っている。
- 安井曽太郎「秋の城山(絶筆)」…巨匠、童心に帰った?
- ルノワール「裸婦」…やっぱり好きです印象派。生命力が光とともに拡がってゆく。
- 新井勝利(模本制作)「鳥獣戯画」…躍動感にびっくり。キャラが立ってる。
- ルオー「たそがれ あるいはイル・ド・フランス」…観る者を安堵させる闇。ルオーも好きなんだよなあ。
- 松本竣介「塔のある風景」…焼け跡のようだが、はい上がろうとするエナジーを感じる。
- 富岡鉄斎「蓬莱仙境図」…芋銭と対照的。全体の構図から、なぜだか龍が見えてくる。
- 熊谷守一「縁側」…牧歌的な記号。計算され尽くしたのほほんさ。
- 棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」…聖俗一体。肉体的だからこそ、聖が見えてくる。
- 横山操「絶筆(未完)」…ブリューゲルを思い出した。
- 横山操「雪富士」…圧巻。モノトーンだからこそ描けた勇壮なる霊峰。
- 中川一政「駒ヶ岳」…カミサンは、カラー版鉄斎と言っていた。禿同(笑)。大地のエナジーが空を侵食してゆく。
- 岡本太郎「遭遇」…「何だこれは?」の実践。
- 秋野不矩「ナヴァウラハ」…プリミティブなエネルギーは、もはや不矩のテーマである「インド」から大きく飛び越えててしまっている。
- 丸木スマ「蝶」「きのこ」…今日最大の収穫かも。スゲエ。老人力。シャガールみたいな、マティスみたいな明るい農村。
- 小泉清「人物(女)」「不動明王」…対象のもつエネルギーを面で受け止め、面で放射する。そんな感じ。
- 高島野十郎「からすうり」…実際のからすうりをリアルに描いただけなのに、対象への迫り方の執拗さと技術の高さが相まって、シュールレアリスムの作品を見ているような錯覚に陥ってしまう。