わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

高橋源一郎『ニッポンの小説 百年の孤独』

 石原吉郎の超難解な現代詩の引用から、「死者」の表現、それは暗喩からしか成り立たないようだが、しかし実際には暗喩など成り立たない場所にまで到達しないと「死者」を「死者」として表現できないのではないか、といったことを少々強引に展開している。そして、「私」とは、「死者」を含めたあらゆる対象(異形のもの)を、上から目線でしか描き得ない、といったことも主張している。

 しかし、「異形のもの」たちが、「私」を(中略)根本的に脅かすことはありません。それは、「私」が(中略)愚かだからではなく、「私」は、「他者」を「他者」でなくする、「私」の召使にしてしまう、そんな文法しかしらないからなのです。

 つづいて、源一郎氏は80年代に活躍したコピーライター、川崎徹の小説『彼女は長い間猫に話しかけた』を紹介し、この作品が「ニッポンの小説」の現代までの過程(これを「歴史」と言ってはいけないんだろうな)を語っていると主張する。ふうん。
 川崎徹の作品、「群像」に掲載されていたものを読んだけど、それはさほどおもしろくもなかったし考えさせられもしなかったなあ。